タルギ(嫁)
「コナン(長男)がカブトムシ捕まえたよ!」
コナンが小学生2年になった夏頃、仕事中の携帯にメールが入った。
その年小学校2年生になったコナンは今年は絶対に捕まえて育てるのだ!と意気込んでいた。ここ数週間は毎日のようにカブトムシをゲットする動きをとっていた。カブトムシの図鑑、虫カゴ、樹液ゼリー、止まり木などなど、着々と準備を進めており、あとはゲットするだけと言う段階。
しかしなかなか捕まえられない。カブトムシのシーズンは真夏。梅雨前では成虫も少ないらしく、いかに河内長野が田舎とは言え、山に入っても空振りが何度か続いていた。そんな中、件のメールである。
確かにウチの裏手は田畑があり虫は多い。私も帰宅途中の路上でカブトムシを見つけたことがある。子供が偶然捕まえることもあるかもしれない。それにコナンだけならまだしも、タルギが証言しているのだからカブトムシはカブトムシであろう。
「カブトムシを捕まえるなんて、コナンやるなぁ」
「そうでしょ?小さいけどね」
「小さくても角があるならカブトムシはカブトムシやろ。」
「無いよ」
「え?」
「このカブトムシ、角が無いよ。メスなのかな」
お〜っと。
角が無いとなるとメスなのだろうが、そもそもカブトムシであるかどうか怪しい。小クワガタのメスかもしれない。
「角、無いんだ・・・。よくカブトムシって分かったね」
「え?だってそうでしょ?チューペット(次男)が言ってるもん。カブトムシのメス捕まえたの!って。なら間違いないでしょ!」
チューペットは幼稚園児ですが!?
怪しい。かなり怪しい。5歳児の判別能力にアラフォーの嫁が頼り切っているではないか。タルギは園児の判断を鵜呑みにしている。
「それって、本当にカブトムシかな?」
「カブトムシやで。コナンもそう言ってるし」
「ちなみにどちらで捕まえたのですか?」
「ウチ」
「え?ウチ?」
「うん。ウチのベランダ」
ウチのベランダ、樹海だっけ!?
その頃の我が家はマンションの10階。そこまでカブトムシが飛来する可能性は限りなく低い。あるいはもしかして近隣階の子供が逃してしまったのか。わずかな可能性だが。
「ベランダにいたって、かなりレアなケースやね」
「うん、私もびっくりしたよ。あるんだね、そういうことってさ」
ない。
たぶん、それは無い。しかし家族三人が小さいメスのカブトムシと言い張っている。もしかしたらと希望を持って、家に帰った。迎えてくれたのは、緑がかった、親指より少し小さいくらいの虫だった。
そんなこんなで現在、我が家ではカナブ・・・、いや、小さいメスのカブトムシを飼育しておりますが何か問題でも?