続編や関連作が公開されると金曜ロードショーでハリー・ポッターをやりますが、そのハリー・ポッターに関連する我が家の話をしよう。
化け物やモンスターの出てくるこの大人気シリーズだが、小学生低学年だったコナン(長男)と、幼稚園年長さんのチューペット(次男)にはホラー映画にカテゴライズされるらしく、金曜ロードショーを私が見ているそばで震え上がるシマツ。
『ハリーポッターと炎のゴブレット』ではハリーがドラゴンから玉子を奪うべく奮闘する。そのシーンを怖がる子供たちをタルギ(嫁さん)がなだめた。
「大丈夫。ドラゴンはいないからね」
ここまでは何てことない。母と子の微笑ましいやり取り。しかし本題はここではない。この後の展開である。
2時間後。
子供たちも寝静まり、タルギが訊いてきた。
「でさ、ドラゴンって、どこにいるんだっけ?」
ええっ !?
お〜〜っと。まさかの展開。ドラゴンがどこにいるか。なかなか難しい質問だ。しかしいない。ドラゴンは空想の生き物だ。いるわけがない。それを見越しての質問か?新手のボケか?俺を試しているのか?そうだよな?
「いや、おらんよ。」
「そうだっけ?イギリスとかにいるんじゃなかったっけ?ハリーポッターみたいに」
「おらんってば。なかなか面白い事言うね」
「あたしは面白いつもりじゃ無いんだけど」
えーと。わりとヤバイ雰囲気になってきた。まさか、信じてるってことはないよな。アラフォーの嫁さんが、ドラゴンを信じてる確率ってどれくらいだ?無い。それは無い。ドラゴンの存在確率に匹敵するくらい低いはずだ。
「ねえねえ、スコットランドの北のハズレとかにいるんじゃない?寒そうだし、炎吐くんなら丁度いい感じだし」
ちょっと強めに言ってみた。
「だから〜、おらんって!映画の世界やし!混乱するから子供たちには言ったらいかんよ!」
やや興奮した旦那に驚いたのか、少しタルギは黙った。しばらくして、はたと気づいたようにこちらを見た。そうか。ようやくオフザケを止める気になったか。
と思ったのは私の勘違いだった。外国人の嫁は恐るべき球を投げてきた。
「あっははは!
そうだわ、ドラゴンは絶滅したんだった!」
スゴイ球きちゃった!!
「してねえよ!絶滅してねえよ!」
「そうなの!?やっぱりまだ生きてるの!?」
「やっばりじゃないし!そうじゃないし!」
「じゃあどこにいるの!?イギリス!?」
「イギリスから離れろや!おらんし!」
「スコットランド?アイルランド?」
「微妙に離れりゃいいってもんちゃうし!」
「じゃあフィンランド?」
「北欧にもおらん!とにかくいないの!想像の生き物なの!」
「え?想像の生き物なの?」
ようやく理解し、絶叫するタルギ。
「ウソだあああ!」
「ウソじゃないってば」
「あたし、実在するって思ってた」
「そ、そうなんだ」
「まさかいないなんて。ハリーポッターの映画の 中の話だなんて、知らなかった。
でもそうだよね。空飛んで、火を吐く獣が今の時代にいたら大騒ぎだよね」
「そうか。ようやく分かってくれたんやね。いや〜焦った。嫁さんの不思議ちゃんっぷりに焦った。でもいい。分かってくれたみたいやし」
「うん、分かったよタムケン。あたし知らなかった。ドラゴンって、ずーっと昔に絶滅したってことなんだね」
コイツ、分かってねぇ!?
「いや、分かってへんやんけ!」
「ええ!?何が!?」
「絶滅したんちゃうがな!」
「してないの?やっぱりまだ生きてるの!?」
「生きてない!フィンランドにも生きてない!そもそも生まれてない!だから絶滅しない!想像の生き物なの!」
「ウソだあああ!ドラゴン、イギリスにいないのかぁ!」
タルギ、2回目の絶叫。
いや、叫びたいのはこっちの方だ。まさか自分の嫁さんがドラゴンを実在の生き物として捉えているとは思わなかった。
これは何のせいだ?個人のせいか?韓国人だからか?ゴリゴリの文系だからか?分からん。出会って10年以上経つが、このタルギと言う生き物だけは未だに分からん。
その後もしつこくヤラセではないかと確認され、ようやく信じてもらえた。
長かった。実に長い夜だった。
しかしその直後、ショック冷めやらぬタルギからさらなる一言が飛び出した。
「でもさ、ペガサスはいるんだよね?」
マジか〜〜!?
そして再び「ペガサスもいないから!」の押し問答に突入。
タルギさん、引き出し多すぎます。
結婚して
何年経っても女は理解できんよね?って話。