たまに自分がどこに属する人間だかたまに分からなくなることがある。
親は鹿児島の人間で、嫁さんは韓国人。
東京に行けば自分は関西人だと思う。
中国に行けば日本人だと思い、アメリカやヨーロッパに行けばアジア人であるとも思う。
私は私。
そう言えば聞こえはいいが、結局自分を的確に表すフレーズを持ち得ない現実があるとも言える。
いずれにしろ、異文化に対するコミュニケーション能力は要であり、中でも特に英語は何かと便利な言葉だと思う。
そんなことを考えていると、ふと大学時代に
同級生だったみっちゃんのことを思い出した。
彼女は間違いなく天然の部類に入る子で、
私はことあるごとに面白いことをしてしまう彼女に対して突っ込みを入れたものだ。
特に英語の授業では日本刀並の切れ味で
ボケをかましてくれた。
大学に入学したての頃、英語の授業でみっちゃんが先生に教科書の日本語訳を当てられた。
先生「みっちゃん、ここから訳して」
みっちゃん「はい」
みっちゃんは英語が弱い。特に発音が弱い。
ウチの大学の入試には英語のヒアリングや会話が問題として出されないので、英語の読み書きはできるが喋れない、聞けないという
みっちゃんみたいなタイプはけっこういた。
そんな中でもみっちゃんは飛び抜けて英会話が弱かった。どれくらい弱いかと言うと、
デンジャラス(dangerous)をダンゲロウスと読むくらいに弱い。
しかしそれに関しては周りも慣れたもの。入学後半年も経った頃には笑う人もいなくなった。 何より一生懸命やっているみっちゃんに失礼だったこともある。
にも関わらず、周囲の思惑をぶっ飛ばすことを 、この日のみっちゃんはやってくれた。
彼女が英訳を当てられた内容は英語新聞で、 大リーグのニューヨークヤンキースについて書かれていた。 野茂英雄投手が大リーグで活躍し、次々と日本人選手が渡米しては活躍しはじめた頃でもあり、時事ネタの記事を訳す課題。ニューヨークヤンキースは固有名詞なので、もちろん訳す時もニューヨークヤンキースそのままでいい。
ところがみっちゃんはやってくれた。
原文はこんな感じだったように思う。
New York Yankies is 〜〜〜
そしてみっちゃんの翻訳
「えっと〜、ニューヨークのヤンキーどもは〜」
ヤンキーども!?
もうびっくりだ。
笑いたいのを必死でこらえる周囲をよそに、
冷静に先生がつっこんだ。
先生「あ、それは普通にニューヨークヤンキースでいいから」
みっちゃん「ええ!?ニューヨークにヤンキーっていないんですか!?」
そう来たか!
まさにボケ乱れ撃ち。
腹筋がねじ切れそうだった。
後日、実はみっちゃんは英会話サークルに入っていることを知った。
彼女は逸材だと思った。