「かゆいトコないですか?」と聞かれたら「当ててください」と言いたい

この世のすべてを笑いにかえて生きるタムケンによるブログ。過去の記憶、日々の思い、外国人の妻や障害(ダウン症)を持つ子供たちとの日常について、笑いとユーモアたっぷりのエッセイを中心に書いています。

大鍋カレーとキウイとサバの件

大学生のときはよくカレーを作っていた。

 

材料を切ってお湯で火を通して、ルーを入れれば出来上がり。

まず失敗することはない。

誰でも作れる美味しい料理。


私が住んでいた大学の寮には、各々の部屋に水道は通っていなかった。

トイレもお風呂も共同。

そして料理をするための配膳室があって、そこで私はたまに料理をしていた。

私が使っていた鍋は寮で代々引き継がれているもので10リットルくらい入るくらいの大鍋。ちょっとした給食用みたいな大きさ。


寮を出るときはなるべく引越しの荷物を軽くするため捨てたりあげたりする。

猪が荒らすゴミ捨て場は春先は粗大ゴミだのなんだので溢れかえる。

そして持っていくほどではないけど、捨てるのももったいない食器類なんかはたいていは誰かが引き継ぐことになるのでその大鍋も先輩が引っ越すときにもらった。


こんな大鍋で料理するからには大量に作らねばならない。

味噌汁1食分をちんたら炊くなんてナンセンス。

だからめいいっぱいカレーを作って、

朝昼晩となくなるまで食べていた。

だいたい1週間くらいかけていた。

食費も浮く。

朝起きてカレーを食べて、昼は授業や実験の合間に戻ってきて食べて、晩にまた食べる。

蓋を閉めて毎日沸騰させておけば、夏でも微生物は繁殖しないので

1週間かけても大丈夫。


しかしカレーの匂いは強力なので、私が配膳室でカレーを温めていると決まって誰かが寄ってくる。


「あ、タムケンがまたカレー作ってる。ちょうだい!」


こんな感じ。

私はご飯持参を条件にみんなにカレーをあげていた。

大鍋で作る料理にはたくさんの食材を入れられるのでかなり美味しくできる。しかも素材が余らないので無駄がない。

1人で食べるなら大変だけど、寮という特性上、余らせたり腐らしたことはなかった。

ちなみにカレーのレシピは下記の通り。


材料:

ジャガイモ 1袋(男爵イモが好き)

ニンジン  1袋

タマネギ  1袋

鶏肉モモ  1パック

ブイヨン  6個

カレールー こくまろ 1箱、極 1箱、いずれも中辛

醤油    1回し

コショウ  ブラックペッパー10振り


突っ込みどころ満載だろうから解説しよう。


基本的に、何グラムだとか大さじ1杯という単位ではない。買ってきた数量をそのまま使う。だから野菜は袋単位。肉はパック単位。

牛肉よりも鶏肉で作ったカレーが好き。

お金がないから?違います。お金ではなく味ですよ味。いや、本当だってば。


ブイヨン入れると味が深まる。なぜかは知らない。何か色々美味しいダシが入ってるんやろうね。ブイヨンは友達に教えてもらってはまった。それ以来欠かさず入れている。


ルーはこくまろが好き。そして極で補充する。

極は学生の頃は見かけたけど今は全然見ないな。絶滅したのかもしれない。飴色タマネギがついてて、とても美味しかったのに。

けど高いんよね。


私じゃなくてもけっこうカレールーを混ぜて使う人がいる。

なぜだろう。もともと香辛料をブレンドしてあるのに。

けど何となく美味しくなる気がするのだ。


醤油はたまり醤油を鍋の上に逆さにして鍋を一周するような感じ。大さじとかで量ったことはない。

コショウも同様。ブラックペッパーの瓶を10回振って粒々を鍋一面に降りかける。


鍋にお湯を沸かしながら野菜を切る。

野菜も大量にあるので大変。

同じ形は面白くないので色んな形に切って遊びつつ。

切ったらそのままお湯に投入。

鍋が大きいので沸騰するのに15分くらいかかる。

その間に野菜と肉を全部入れてしまう。

ブイヨンも入れる。

炒めてからお湯を入れる人が多いみたいだけど簡略化してた。

野菜切るのも、大鍋にお湯を沸かすのも時間がかかるので同時進行でやるようになってしまった。

実際、炒めても味はあまり変わらない気がするし。


野菜が煮えたらアクをとってルーを一個づつ溶かしながら入れる。

2箱のルーを溶かしたことある?

すごく時間がかかるんよね。

そして1時間くらい煮込んで醤油とコショウを入れて完成。


配膳室には畳やソファもあったのでそこに本や漫画を持ち込んで、読みつつ煮込みつつ。

何やかんやで3時間くらいかかっていたと思う。

料理をしているのか、本を読んでいるのかは微妙なところ。

煮込んで本を読んでいる私の周りには匂いをかぎつけた人たちがご飯を入れた電子ジャーとお皿、スプーンを持ってわらわらと集まってくる。

そして煮込み終わるまでみんなでじっと待っている。

変な集団。

災害地区の炊き出しのようだ。


よく言われたのが


「タムケンの料理って豪快やね」


自分でもそう思う。

あんまりちまちましたのは性に合わないので

どば〜っと買ってきてどか〜んと作る。

みじん切りにしたり手間隙かけるのは面白くない。

時間がかかるのはいいんだけど本を読みながらできるくらい楽な方がいい。

カレーの他にも豚汁とかシチューとか煮物とか、割と空き時間の多い料理を好んで作っていた。

汁物や煮込む料理が多い。

別に誰に出すわけでもなし、それしか食べられないわけでもない。

だから食べたいときに作るだけ。

寮伝統の大鍋で、冬はナベをよく食べた。

大きな料理は美味しいんだな〜。

なぜだろう。


カレーに話を戻そう。

量や料理の仕方は豪快だと思うけど、使う素材はそんなに変でもないと思う。

けれど寮の中には色んな人種がいて、他の人が配膳室にいるところを覗くとかなりおもしろい。

(その時は私がご飯と皿とスプーンを持って

 配給してもらう側)


変な具材については


・コンニャク

・チクワ

・キウイ

・サバ

・林檎

・水ではなく牛乳で作る


なんていうか、私としてはあり得ないものばかり。

キウイは最初ジャガイモだと思って食べたのだが腐っていると思って吐き出してしまった。

カレーにキウイが入っているなんて想像できる?

そしてサバ。

なぜカレーにサバ?

製作者曰く。


「サバの味噌煮だってあるんだから

 カレーで煮込んだってええやん」


煮込みってことでひとくくりにしていいものか。

まあ、そんなに悪くはなかったけれど。

サバカレーってご当地グルメもあるみたいやし。


カレーの作り方や具材は、誰しも何か一癖持っている気がする。それはこだわりと言える。

誰でも美味しく作れるゆえに、何か工夫が入る。その工夫を訊いてみるとけっこう面白い。

そしてそういう親がいると、子供もそれが当たり前になって小学校でバカにされて泣いて帰る羽目になる。

つまりカレーはもはや日本の文化になっているのだろう。

だから味噌汁のようにバリエーションが増えて

時に周囲を仰天させる品となる。