家の中では裸足が好きだが、裸だとベタつくのである。特にレザー製のスリッパを履くとベタつき環境がMaxになる。
我が家の、というか私のスリッパの問題。
タルギ(嫁さん)が用意してくれているスリッパはレザー、というか合皮なので、裸足で履くとベタつく。特に風呂上がりはベタつきが顕著で、しばらくの間、じとじと、ベタベタして気持ち悪い。
冬は靴下を履いているから構わないが、夏は家の中では靴下を履かずに過ごしたい。裸足でレザーのスリッパを履くと肌がベタついて気持ち悪い。
かと言ってテキトーに100均のスリッパなんぞ買ってきた日には嫁さんに激怒されること間違いなし。
韓国人の嫁、タルギは家の中の調度品にうるさくて、見た目に派手なもの、自分の趣味に合わない道具などを置かれるのを極度に嫌がる。
曰く
「ワタシの部屋に合わない」
いや、旦那の部屋でもあるよね?と突っ込みたいところだが、そんな発言や不満顔は決して見せてはならない。それが夫婦円満、ひいては日韓関係の維持につながるのだから。
首相が岸田氏から石破氏に交代したところなのに、国際問題を増やすわけにはいかない。
とは言え、本来リラックスする自宅で、足元のベタつきはなかなかのストレスである。雨で濡れた靴下を1日中履き続けるに等しいというか、致命的ではないにしろ、はっきりとした不快感を足下が訴えてくる。
じゃあタルギにスリッパを選んでもらって買えばいいわけだが、そんなのはとっくに済んでいる試みだ。私からの、ベタつかない、サラサラスリッパ購入の申し出を受け
「うん、まあ、買っとくよ」
との返答から既に数年が経過している。国会議員の「前向きに善処します」とか、あまり親しくない知人の「今度飲みに行こう」とかと同じく、面倒なのでやる気が無いのは明らか。
仕方ない。
女子好みの、地味でナチュラルなイメージのスリッパをこっそり買おう。
イメージはIKEAや無印良品の売場に並んでそうなデザインと質感。ドン・キホーテやダイソーを想起させてはならない。(ドン・キホーテやダイソーは優秀な会社だけど今回の案件には不向き)
Amazonでいい感じの麻のスリッパを数百円で発見。これならタルギの趣味にも合って良さそうだ。タルギ歴20年の私でこそ分かる兼ね合い。ふふ。これぞ抜かりない旦那というものだ。
ポチッと購入。
数日後。麻のスリッパが届いた。
平日の夜、タルギはもう寝ている。
さっそくスリッパを履いてみた。
うーん。なかなかいい感じ。
風呂上がりの裸足で履いてもベタつかない。
これこれ。
こういうのがいいのですよ。
自宅のストレスフリーな過ごし方に必要なツールだ。
大満足でその日は床についた。
次の日。
タルギにソッコーでバレた。
隠してもいないので当たり前ではある。
仕事が終わって帰ると、遅い時間にも関わらずタルギが寝ずに起きていた。
私の「ただいま〜」の一声を遮る勢いで
「このスリッパなに?」の質問ありけり。
危険だ。
思ったより熱量が高い。
このあたりの空気感や熱量を察知できるか否か、それに対してどのように返答するかで、夫婦生活の質は大きく変わる。
嫁さんが切り出す話題、話すタイミング、声色、顔色、単語。
それらが何を示すかを瞬時に嗅ぎ取らねばならない。
間違いない。私が買ったスリッパの質感やデザインが気に入らないのであろう。ここは仕方ない。国際問題に発展させないためにも謝るか。
「ごめん。スリッパ買っちゃった」
「そんなのはいいの」
「デザインが気に入らないとか?」
「そんなのもいいの」
違う?
じゃあ何が気に入らないのか。
「んでは何が気に入らないの?」
タルギの答えは予想外だった。
「スリッパなんて買う旦那がいてたまるか!!」
どういう角度!?
理解不能な怒りをぶつけられ、何をどうしていいか分からない。スリッパを買う旦那がいちゃ駄目なの?
Amazonで麻のスリッパを買うときにも
女子のみ、というアラートは特に無かったのだが。
「いや、買うでしょ、そりゃ。男も旦那も買うでしょ」
「いない!家のスリッパを旦那がへらへら買うなんてありえない!」
「奥さんのスリッパならともかく、自分のスリッパくらい買ってもいいのでは」
「駄目!見たことないわ!反省しなさい!」
ええ〜?
駄目なの〜?
その後もタルギは旦那がスリッパを購入するのは駄目だと言い張り、私とは全く意見が合わず。
最後にこう言った。
「会社の人にも聞いてみなさい。
旦那はみんなスリッパなんて買ったことないはずだわ」
第三者のジャッジを仰げと。
こんなこと聞くまでも無い気がするし、
会社の同僚に聞くようなことでもないが、
二人で言い争ってもらちが明かないのは確か。
で、会社の同僚や部下で、所帯を持つ人たちに聞いてみた。旦那がスリッパ買うことってある?
その結果、旦那は誰も自分でスリッパを買ったことが無く、
奥さんは誰も夫に買わせたことが無かった。
マジで!?
驚愕の事実。
スリッパや調度品にこだわりがあるとか、
そういう好みがあるとかでもなく、
何となくスリッパは奥さんが買っていると言う感じだったが、事実、私の周囲の所帯持ちで旦那がスリッパを買った事例は無かったのである。
この事実をタルギに報告するや、
タルギはとても満足そうに言い放った。
「ふ。アタシの言う通りだったでしょ」
自分が旦那から要望されていたスリッパを何年も買わずに放置したことは一切棚上げし、勝ち誇るタルギ。
敗北を認めざるを得ないジャパン代表タムケン。
スリッパって旦那が買って履いたら駄目なの?