「かゆいトコないですか?」と聞かれたら「当ててください」と言いたい

この世のすべてを笑いにかえて生きるタムケンによるブログ。過去の記憶、日々の思い、外国人の妻や障害(ダウン症)を持つ子供たちとの日常について、笑いとユーモアたっぷりのエッセイを中心に書いています。

大陸の嫁と大陸の木

 

私もタルギも新築の家には興味がなく、河内長野の築40年のボロ家を買って移り住んで、はや7年。
壊れたところはYouTubeの動画を見ながら治し直しナオシ。壁、床、天井、庭、あれやこれやとDIYで手を入れた。
ダウン症の三男、立星(りゅうせい)は大胆なタッチでお絵かきをする。彼の才能はお絵かき帳におさまらないので、壁や床までマジックペンが飛び出していく。実はバンクシーなのかもしれない。
ニューカマー、猫のムギくんは全力ダッシュで床を引っかき、廊下を急旋回でギャンギャンドリフト。猫の爪とはこう使うのだ!と言わんばかり。気にしないキニシナイ。ニャンともならない。

それをぶち抜く自由な輩がいる。
名はタルギ。我が妻なり。

庭の草を抜いていた私にクレーム。
「ああ!タムケンその草 抜いたらダメ!」

なんで?

「だって、カワイイ草だから」

カワイイ草!?

カワイイ草は抜いてはならないらしい。
タルギの嫌がることはしたくないが、その基準は不明だ。庭に生えている草を見ながら、タルギの規定を一つ一つ確認してみた。

この草は抜いていいの?

「ダメ。私がまいた花の種から出た芽」

いや、どう見ても草だけど。

この草は?

「ダメ。植え替えたカワイイ草」

植え替えた草。それはただの草では?

この草は?

「いいよ。それはただの草」

この草は?

「えっとね、それは、分かんない」

分からない??

タルギにも判別不能であるからには、私に分かるよしもない。
気に入った草をどこかの道端から持ち帰って庭に植えたり、種を買ってはテキトーにまいたり、気に入らない草は抜いたり許したり、もはやそのさじ加減はタルギにも分からない。だったらなぜ私は叱責されたのか。理不尽極まりない仕打ちに文句の1つも言いたいところだが、そんなことを気にしていては国際結婚は成り立たない。(国際結婚ってこんなだっけ?)

タルギは今の家に引っ越してきた年に、門の横に木を2本植えた。木の名前は分からない。
本人曰く。
「たぶん、オリーブの木だと思う」
自分で買って植えたのに木の名前はよくわからないらしい。例によってカワイイから植えたくなったとのこと。私が気に入った木や種を植えようとすると、家の雰囲気が変わるとか、私の好みじゃないとか何とか散々文句を言われて妨害されるが、タルギは自由にテキトーに植える。理不尽だなぁと(中略)

オリーブを植えたことはないので植生を調べたところ、異なる種類を近くに植えるほうがいいそうだ。一本は確かにオリーブのような葉。長細い。もう一本葉全く違う形の葉を茂らせている。かなり丸くて平べったい。あまり日本では見ないタイプ。こんなオリーブもあるのね。
実はすぐつかない。土地に馴染んで力を持ってから実がなるっぽい。桃栗三年柿八年って言うしね。

あれから数年。

細長い葉っぱのオリーブはそこそこの樹勢でのびていた。観葉植物としてはいい感じ。
問題は丸い葉っぱのオリーブ。こいつがもう尋常ではない勢いでのびるのである。横に、縦に、上に、ガンガンのびる。何度も剪定して広がらないようにしていたが、放っておくと道路の電線に接触していただろう。大別して同じオリーブの木とはいえ、かなり様子が違う。

っていうかこの木々、ホントにオリーブか?

オリーブだとしているのはタルギからの情報が根拠。庭の草花の話からすると、情報の制度がかなり怪しい。様々なオリーブの品種はあれども、木の成長が何倍も違うのはおかしいし、タルギに再度確認したほうがよさそうだ。

「あのさぁ、門の横に植えた木のこと何やけど」
「うん」
「タルギさん、オリーブの木って言ってたやん」
「え?あの木ってオリーブなの?」

忘れちゃったのね!泣

初手で終わった。もはや忘却の彼方でした。
自分が買ったことすら覚えていなかった。これは質問するだけ無駄か。

うーん、本人が覚えてない以上は、なかなか木の種類を調べられないな。どうしたものか。
思案していたところ、アプリで葉っぱを撮影すると植物の種類を判定してくれるAI検索を発見。
おお~、世間はAIだ何だの騒いでいるが、こんなところでも役に立つとは。検索になぜAIが必要なのかよく分からないが、AIを使うなら相当凄いはずだ。
(よく分からないが凄そうなことはとりあえず信じてしまうワタシ)

早速ダウンロードして試してみた。

ふむふむ。アプリのカメラモードで撮影するだけでいいのか。超簡単だ。さすがAI。
(操作性はAIとは関係ありません)
細長い葉っぱ君を撮影して検索オン!即座にアプリが結果を表示。

種類:オリーブの一種。なんちゃらかんちゃら

おお〜、はやっ!
しかも事前の曖昧な情報の通りオリーブだったのが嬉しい。 
植えた木はオリーブだと言われていて、せっせと水や肥料をやり、剪定し、それを忘れられて、自分で調べて、その木が本当にオリーブだっただけでこんなに嬉しいなんて。
何かタルギと暮らしいているせいで価値観がズレて来ている気もするが、どのへんがズレているのか既にわからないからもういいや。

で問題の丸形葉っぱ君。
君はどんなオリーブなんだい??

写真を撮影してAI検索オン!
即座に結果が表示された。

種類:ユーカリの木

うん?ユーカリ

ユーカリ????

どういうことだ。
ユーカリってオーストラリアでコアラが食べる植物以外思い当たらない。
そんな植物がなぜ日本にあって、タルギが植えたのだろうか。
んで、丸形葉っぱのユーカリを植える理由を調べたところ、ユーカリにも様々な種類があり、コアラが食べるのは長細い葉のユーカリ。丸型で少しハート型になっているユーカリは、葉の形が可愛らしいため、日本でも観葉植物として割と人気があるらしい。

なるほど。
じゃあ観葉植物としては日本にもあるわけか。

さらにその特徴を検索。
1つの項目に釘付けになった。

樹高:25メートル以上

おおう!?
25メートル以上にのびるの!?
なんてことだ。大木じゃないか。
そりゃめっちゃのびるわ。
コアラも住みたくなるわ。
大陸の植物の勢い恐ろしや。

タルギにも報告した。

「ねえタルギさん、門の横の木ね、ユーカリだったよ」
「ふうん、そうなんだ」
「放っておくと25メートル以上になるって」
「大変やな」

リアクションうすっ!
もう興味ないのね!泣

そんなこんなで我が家の門にはユーカリとオリーブがコンビで鎮座。
公共の電線に迷惑をかけないように日々ザクザクと剪定するワタシ。

大陸の嫁と大陸の木は、島国のおっさんの手には余る、という話。