「かゆいトコないですか?」と聞かれたら「当ててください」と言いたい

この世のすべてを笑いにかえて生きるタムケンによるブログ。過去の記憶、日々の思い、外国人の妻や障害(ダウン症)を持つ子供たちとの日常について、笑いとユーモアたっぷりのエッセイを中心に書いています。

聴診器と会話する医者、 ビールは健康飲料と述べるおじいちゃん

この数週間ほどずっと体調が悪かった。


はじめは風邪をひいているような状態だったが、熱も出ず、夜に咳ばかり出る。


さすがにおかしいと思って、出社を遅らせて病院で受診したところ、気管支炎だった。
まあそれはいいのだが、病院と薬局で、それぞれ変な人を見つけた。

 

1.聴診器と会話する医者

私が受診したのは、体調を崩した時によく行く記念病院。
かかりつけ医、と言っていい。
ただし割と大きめの病院なので、同じ科を受診しても曜日によって医者は異なる。
この日は初めての担当医に当たった。

症状を話したところ、よくあるように聴診器を当てるので服を脱いでくれとのこと。
そして私の体の、特に肺を中心に聴診器をあちこちに当てたのだが、その当て方が奇妙極まりなかった。

 

「はい、深呼吸して〜、ここはどうかな?
む〜、むむっ!?」

「はい、息を吸って〜、
さて、こっちは、おお!?」

 

何か問題でも!?

 

いや、確かに息がゼエゼエ言ってたから、異音を聞き取ったのは間違いないだろうが、一呼吸ごとにリアクションされたのは初めて。

 

「また息を吸って〜、こっちは〜、
ふむふむ、なるほど!」

 

誰と会話してるの!?

 

もう、笑いをこらえるのが大変。
ある種の拷問に近かった。

結果、気管支炎と診断(本当かよ)

 

2.ビールは健康飲料と述べるおじいちゃん

診察を終えて薬を受け取るべく病院の向かいの調剤薬局へ向かった。

 

処方箋を渡してしばし待つ。


先客がいた。
おじいちゃんだった。
70歳は超えているだろうか。
茶色いキャップをかぶり、薬剤師のお姉さんに話しかけている。
平日の午前中。暇なお年寄りは世間話の相手をあちこちに求める。
よくある光景だ。
少し耳が遠いのか、声が大きいので嫌でも会話が耳に入った。

 

「また薬が増えてもうたわ。
なんでやねん。もうイヤやわ。薬漬けやわ」
「そうなんですか。
お身体の具合がよろしくないのでしょうね」
「まあしゃあないわ。
血圧下げなあかんし。下げたいし」
「どのくらいなんですか?」
「上が200超えてるねん」

 

半端ねえな!

 

多分、収縮時血圧が200mmHg以上ってことだろう。あまり血圧の話には詳しくないが、相当なレベルであることは分かる。確かに薬漬けになるはずだ。

 

「しかしワシ、なんでこんなに血圧高くなってもうたんやろうな。分からんわ。未だに分からんわ」
「そうですねぇ。遺伝的なこともありますし、生活習慣の場合もありますし」
「酒はけっこう飲むけど、
そんな大したことないし」

 

ん?
けっこう飲むの?

 

「酒は高血圧とは関係ないもんな」
「いえいえ、お酒の飲みすぎは良くないですよ」
「飲みすぎても大丈夫やで。
だってビールやもん。
ワシ、ビールしか飲まへんもん」

 

どんな理由だ!

 

これには薬剤師のお姉さんもかなり困っている様子。ビールが血圧に悪いかどうかは知らないが、飲みすぎが体調全般に悪いことは周知だ。

 

「おじいちゃん、ビールもお酒なんですよ」
「まあ酒とは言ってもビールやけどな」

 

噛み合ってない。
全然分かってない。
大変だな、平日の薬剤師さんは。

 

「飲みすぎなければ
どんなお酒でも飲んで構いませんけど」
「ボチボチしか飲まへんよ、ワシは」
「毎日飲まれるんですか?」
「そや!毎日朝晩欠かさずや!」

 

ええ!?

 

おいおい、何気に凄いこと言ってないか?
毎日はともかく、朝晩?
そりゃ飲みすぎだろう。

 

「朝晩ですか?」
「そや!欠かさへんで!」
「おじいちゃん、それは飲みすぎですよ。
毎晩でも体に悪いのに、朝も飲んでしまうなんて」
「しもた。間違えたわ。朝と晩ちゃうわ」
「ああ良かった。じゃあ晩だけですかね?」
「違うねん。朝から晩までの間違いやった」

 

余計悪いわ!

 

このおじいちゃん、なかなかの強者だ。
要は四六時中飲みっぱなしじゃないか。
そりゃ血圧も高くなるってもんだ。
コレ。高血圧の原因間違いなくコレ。

 

「おじいちゃん、それは完全に飲みすぎですよ。
少し控えられた方がいいと思いますよ」

 

薬剤師さんから優しいお言葉。
こちらもなかなかの腕前だ。
私のようにいちいち驚いたり突っ込んだりしない。心の中では突っ込んでるかもしれないが。

 

「そうかいなぁ。
ワシ、そんなに酒、飲んでへんと思うで。
体には悪くないで」
「そうおっしゃらずに、少し控えられては」
「大丈夫やって。平気やって」
「どうしてそう思われるのですか?」
「だってビールしか飲んでへんし♪」

 

だからどこで教わった説なの!?

 

あくまでビールは酒じゃない、体に悪くない、朝から晩まで飲み倒しても平気と述べるおじいちゃん。このビール健康飲料説はいったい誰から聞いたのか。全くもって謎である。
多分、来月はまた薬が増えることだろう。

おじいちゃんの体内で、ビールメーカーと製薬会社が人知れず戦ってることだけは知っておいてもらいたい。

 

追伸)
すでにどうでもいいと思うけど、私の気管支炎は無事に治りました。