「かゆいトコないですか?」と聞かれたら「当ててください」と言いたい

この世のすべてを笑いにかえて生きるタムケンによるブログ。過去の記憶、日々の思い、外国人の妻や障害(ダウン症)を持つ子供たちとの日常について、笑いとユーモアたっぷりのエッセイを中心に書いています。

とんでウクレレ

とある休日。昼前の出来事。

子供たちの朝食も終わり、
一段落したタルギ(嫁さん)が
慌ただしく身支度を始めた。

そう言えば午後は出かけるとか言ってたな。
どこ行くんだっけ?

 

「ねえタルギさん、今日は予定があるって言ってたけど、どこ行くんだっけ?」
「ああ、言ってなかったかな。ライブに行くの」
「おおー、ライブか。俺も久しく行ってないな」

 

音楽が好きなタルギ。
かねてから日本のライブに行ってみたいと
ボヤいていた。
とは言え私たちは子育て中の夫婦。
幼い子供を置いてなかなか行けるものではない。
行きたければ俺が子供たちを見ておくから一人で行ってもいいよ、と言ったことはあった。
どうやらそれが今日らしい。
しかし事前には聞いてなかった。

 

「でも急な話やな。どんなライブにいくの?」
ウクレレのライブだよ」

 

なるほど。

2年ほど前に突如としてウクレレを買い、弾いたり歌ったりし始めた。これは別のときに語るとして、わりと飽きっぽいタルギにしては思った以上にウクレレの演奏を継続していた。
そこで、歌うだけではなくライブにも行ってみたくなったわけか。

 

「なるほど、ライブに行くのはウクレレの勉強のためでもあるわけね」「勉強?う〜ん、まあそれもあるかもね」
「どこでやるの?」
「富田林のカフェ。ウクレレの弾き語りってあんまり設備要らんし、うるさくもないし、割とどこでもできるんよ」

 

富田林(とんだばやし)は南大阪の町。
大阪府とは言え、田舎風景が色濃く残るところで、ライブハウスがあちこちにあるような都会ではない。
したがってタルギが行くライブは、有名なアーティストのものではなく、地場に密着したインディーズ系のミュージシャンってとこだろう。

 

「で、そのウクレレミュージシャンって誰?ウクレレには詳しくないから俺が聞いても分からんとは思うけど、一応名前とか教えてよ」

「私」

 

え?

私??

 

聞き違いか?
今、"私"って言ったのか?

 

「えと、タルギさん、"私"って言った?
"ワタシ"って名前のミュージシャンがいるのかな?」

「違うよ。私がライブするねん」

 

"私"がライブ!?

 

キタ。
またキタよ、タルギのトンデモ行動。

 

「ちょっと待ってくれる!?
タルギさんってば人前で弾き語りのライブとかするの!?」
「うん」
ウクレレはじめて2年でライブするって凄くない!?」
「そうかなぁ。
楽器はじめて二、三ヶ月でライブする人もいるよ」
「そりゃ世の中にはそんな猛者もいるだろうけど」
「そんなに珍しくないよ。知ってるし、そういう人」
「誰??」
「私」

 

お前かよ!

 

猛者だ。
ウチの嫁、ハンパない猛者だった。

 

「今回が初ライブじゃないわけ!?」
「うん。かれこれ一年くらい、チョイチョイとライブしてるねん」
「チョイチョイやってたの!?」

 

さすが大陸の血を引く女。
楽器をはじめて二ヶ月やそこらでライブデビューするとは。
強い。
ハートが強すぎる。

 

「って言うか、さっきからごちゃごちゃ何なのさ。
ダメ?ライブしちゃダメなわけ?」
「ダメじゃないけどなんて言うか・・・」

 

驚きである。単純に。

いつの間にか自分の嫁さんがストリートミュージシャン(カフェミュージシャン?)として人前で弾き語りとかしているなんて。
そんなことってあるのか?
知らない間に嫁さんがミュージシャンになってるとか、あり得るのか??

 

「あ、ごめん、そろそろ行かないと。
ファンが待ってるから♪」

 

ファン!?

 

状況についていけずにフリーズする私をよそに、タルギはウクレレを担いで跳ぶように出て行った。

皆さん、大陸産の嫁さんをもらうと、たまにミュージシャン化するようです。

 

〜追伸〜
古い家だとウクレレの音色に誘われて座敷童子が出ることもあるそうです。ご注意ください。


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