私の嫁さんであるタルギは韓国人なのだが、自分の間違いを外国人だから仕方ない、と誤魔化すことがよくある。
付き合い始めた最初のうちはそうなのかも、と思っていたが、割と決定的に違う証拠が多数出てくるので、程なくして単にタルギが面白い子であることが分かった。
つい先日もその証拠が出たので紹介しよう。
「ねえねえタムケン、子供たちの靴なんだけど、傷んでるから買い替えたいのよ」
「そうなの?じゃあ買ってあげて」
「ありがと〜。でもどんなの買おうかな?」
「男の子だし、赤とか青とか、ハッキリした色がいいんじゃないかな」
「そうよね。で、靴ヒモがあるとほどけて絡まりやすいから、まだしばらくはヒモじゃないのがいいと思うのよね」
「ヒモじゃないのって?」
「ええとね、んっとね、あれ?なんだっけ?」
どうも思い出せない様子。
ヒモじゃないならマジックテープなんだろうけど。
「それってマジックテープじゃない?」
「そう!それ!」
「マジックテープが出てこないなんて。タルギさんも年とったね。老いたね。まあ俺も簡単な言葉が出ないのは最近よくあるけど」
老い、という単語にタルギが噴火した。
「老いって何やねん!まだ若いわ!
老いとらんし!全然やし!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃない。年とったら誰でも老いるわけで、言葉も出ないことが増えるのは普通でしょ」
「オイオイ言うなや!
ちゃうやん!私のは老いとはちゃうやん!
韓国人やから!外国人やから!
日本語が少し出ないのは仕方ないの!
マジックテープって日本語が出ないこともあるの!」
予想外の勢いで憤慨するタルギ。
どうも老いと言われることがかなり嫌っぽい。
「分かった分かった。悪かったよ。
老いじゃなくて外国人だからなのね。
ちなみに韓国語ではマジックテープって何って言うの?」
「韓国語でもマジックテープって言うよ」
同じなのね!?
何なんだ、この展開は。
この子ったらどうしちゃったのだろう。
日本語でも韓国語でも同じ単語なら、外国人とか関係ないやん。
単に言葉が出ないだけやん。
確実に老いだな、と思った。
あんにょ~ん